その日、真っ黒な洋服に身を包んでいて、そして何もわからず呆然と姉の隣に立っていた。何にもの人が軒を連ねるように並んでいて、その最前列には異母兄がたった一人で佇んでいる。それを知っていて、けれど彼の表情を見ることは出来なかった。想像することすら、幼いこどもにとっては容易なことではなかった。ただ何も考えられないまま、背の低かったユーフェミアは同じように背の低い幼い異母兄の背中を、視界に入らないながらも見つめ続けた。外の景色は覚えていないが、ただ誰が泣くわけでも笑うわけでもない異様な葬式だったことだけは鮮烈に記憶に残っている。今になって思い返しても、具体的な参列者のひとりすら名前に出すことが出来ないのに。結局目の前のものが大好きな人が眠る棺桶であるということ私はまったく受け入れられずに、何ひとつわからないまま式を終える。そして、外へ出た私は異母兄の姿を追った。見つけられないことを姉に嘆くと、彼女は黙ったままユーフェミアの頭を撫でるだけだった。
(ルルーシュ、)
何もわからなかった、けれど、ひとりきりだった異母兄の傍にいたいと考えた。そして姉の手を振り払って宮殿を駆け出し庭の奥へと駆け出した。気が覆い茂っているまるで森のようにも思えるそこで、情けのないことに幼なかったユーフェミアは泣く事しか出来なかった。ルルーシュに会いたい、ナナリーに会いたい、会わせてくれと声を上げて泣く事しか出来ない。日も暮れて星が現れだした頃、遠くから私を呼ぶ姉の声を聞いた。汚れきった肌触りのいい布は涙に濡れ切り、もう使い物にはならなくなっていた。怒られるだろうかとこれもまた使い物にならなくなった頭で考えふらりと立ち上がったその時、見つけたのだ。一本の木の後ろに、悲しそうに笑うルルーシュがいた。
(会いに来たんだわ!)
つかの間の喝采と、そして彼の悲痛な表情に心痛めたが彼は私の手が届く前に消えてしまった。まるで幽霊のようだと思った。その日の夜、姉に連れられ宮殿へ帰った時、ユーフェミアは彼らが日本へ行くことを知ったのだ。