光が差し込む中、遠目で不思議な一団(きっと傍から見たらそうとしか思えないだろう)と、そこまでの違和感もなく話せる彼を見て息が詰まったことを思い出す。まるで彼の中に、あの不思議な一団がひとつの領域を構築してしまっているようで嫌悪感があった。嫉妬だろうか。そして今目の前にいる鴇は、いたずらがバレた小さな男の子みたいな仕草で、でももっと深刻そうな顔をして立っていた。縁側は、びっくりするくらいに眩しい光に囚われていて、目の前の彼の顔すらも直視できないほどだ。顔を上げることが酷く苦痛だった。眩しい。
そうして逸らした目線を何と勘違いしたのか、慌てて小さくあわあわと口を開く。けれどそこから何も声は発せられず、結局こちら側の発言を待つような形になった。自分だって、どういうことを言えばいいのかわらないのに、無責任な奴だ。こんなとき、誰か、他の誰か第三者がいたなら話しをすることなんて然程難しくもなかったろう。今だって、話しをしようと思えば簡単で、ただもっと難しいことをしようとしているだけなのかもしれないが。


「・・・あの者達はなんだ?」


すると困ったように「えーと」なんて頭を抱え始めた。与られた質問に対してどう答えるべきか、本当に本気で悩んでいるのだろう。実際、自分としては答えはどうでもいいとまではいかないが、それほど気にすることではなかった。ただ自分を脅威でもなく哀れでもなく、ただの人とか女の子とか、そういう風に見てくれる存在や目を失いたくないだけだ。その目が、あの光が差し込む中で話していた彼らとはまるで関係ないところにあることはわかっているのだけれど、それでも不安は募った。


困ったように口をあわあわとさせる鴇は、本当にイタズラがバレてしまった小さい子どもみたいだった。そしてその目がこちらに向き、あわあわと頼りなく開くだけだった口がしっかりとした言葉を紡いだ。それは酷く簡単で、「何て言えばいいのかよくわからないんだけど、悪い人達じゃない」と。限りなく言い訳に近いそれも、きっと真実なのだろう。そんな風に思えてくるような安心させようとする口調だった。そして思い出すのは自分の中にある、恐らくその「悪い人達じゃない」という奴らと同じもの。鴇はそれら否定したくないだけなのだろうか。自分の中にあって、その本人すら否定しているものを、まるで赤の他人である彼が「否定したくない」なんて本当におかしな話しだろうが、考えられなくもないことだと思った。でも、もしそうだとして、その考えは、今まで自分が必死で忘れ去ろうとしてきた事実を真実だと認めざる得なくするものにしかならない。「一部」を否定したくないから、「全体」も否定せず受け入れる。そのとき、その一部は全体と同じものになってしまう。確かに事実だ、でもそれを受け入れたくないと必死で喚く自分がここにいる。


「妖は、敵だ」

そう言うと、相手は多少ショックを受けたのかはよくわからないが呆然とした顔をして、でもそんなに驚いた風もなく「知ってるよ」と言った。悲しそうだと思った。それでも、この優しい目が自分に向けられなくなるのは耐えられないから。敵に回すとか、それ以前に。でも鴇はきっとやめはしないだろうに。否定したくないと、意外に頑固だから何があっても言い続けるかもしれない。そしてあの目を自分に向けることもやめはしないだろう。知っている。なのにこんなことを言う自分は、それほどに不安に弱いのだ。







080216
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