「だから、さそり座が昇るとオリオン座が沈むんですか?」
「まぁ、そういうこじ付けの神話さ」
「おもしろいじゃないですか。さすが力自慢も神様には勝てなかったんですね」
そういうことさな、と言いながらちょっとだけ口の端を上げてニヤリと笑った。会ったばかりだが年も近いせいか自分でもすっかり仲良くなっているなぁなどと思った。ユウの話しを聞いたときは、なんて頑固な少年だろうと思っていたが、実際会ってみれば普通の15歳よりちょっと大人びていて、それでいて少し可愛らしいところもあって、とそんな印象を受けた。ユウみたいに、あっさり突き放す訳でもなくだからといってリナリーみたいにいまいち掴み所のないような女の子って訳でもなく・・・元来から言う「話しやすいタイプ」といった感じだ。まぁ自分もそういう部類に入るのだけれど。
「・・・ラビは色んなこと知ってますね」
「そう?まぁ次期ブックマンだしなー」
「ははは」
「他になんか話して欲しいこととかある?」
退屈な汽車の中だし、あんまりに目を輝かせて聞いてるものだから聞いてみた。アレンは少し黙って上をちょっと向いて・・・そのまま聞きたいことが有り余っているのか、それとも何も思いつかないのかぐるぐると思考をかき回しているみたいだった。なんだかそのときの仕草が妙に幼く(普段から少し大人びているせいかもしれないが)見えて、笑いを堪える。・・・笑ったら失礼だろうし、と思うがそういう反応もちょっと見てみたい気もした。そんなことを考えている内に、笑う間もなくアレンの目がくるっとこちら向いて、「じゃあさっき読んでた本はどんな本だったんですか?」と聞いてくる。先ほどと変わらずに、少し幼い感じがする。
「うーんアレンには難しいと思うさぁ。」
「なんの本なんですか?」
「医療学系」
アレンの目がひきつるのがわかった。・・・そりゃああんな分厚い医療学の本なんて、よっぽどのマニアとか俺みたいなそれが本業の奴じゃないと読まないだろうけど。そんな、人外だ!みたいな反応をされるとさすがに傷つくような気がする。気がするだけだけど。アレンはその本については諦めたようでまた同じように、くるりと目をこちらに向けてきた。
「じゃあその前に読んでたのは?」
「あーあれはただの恋愛小説さ」
「どんな?」
「・・・アレンにはまだ早いかなー」
すると、すかさず「どういう意味ですか」とツッコミが入り、そのまんまの意味さーと茶化してやる。ちょっと怒っているアレンを尻目にホントに仲良くなったなぁ、とか自分で思いながら皆が起きたらどんな反応するかがなんとなく気になった。びっくりするだろうか、それともまぁそんなもんかなといった感じでスルーされるのだろうか。とりあえず、この綺麗というか可愛いというか、2対3でそれ割り振ったようなそんな感じの目の前にいる生き物と、たくさん話しておこうと思った。
080216
残留