「それにしても・・・」
「はい?」
「ホントによく食べるよね。」
「そうですか?」
いくら成長期といえども限度というものがある・・・誰だって、このものすごい惨状を見れば「よく食べる」くらい言いたくなるだろうと神田は思った。アレンの前に並べられた様々な料理を見ると、正直めまいがする。とてもじゃないけど「そうですか?」程度で済ませられるようなモンじゃないだろう。自分がいつも蕎麦だとかさっぱりしたものばかり食べているせいかもしれないが。けれど当の本人は、けろっとした表情でひたすら食べつづけていた。
「それにしても・・・一番気になるのは、それで太らないところよね」
その一言で、何故だが無性に苛立った。
初めに会ったときは肌も白かったので、さながら幽霊のような奴だと思ったものだ。それから今も、アイツはどこか生きているという感じがしないのだ。食べても太らないところなんか、その象徴のように思えてしまって仕方がなかった。何のために生きている、とかそんなことは関係なく、自身から生気が感じられない。
段々と苛立ちが増して、わざと大きめな音を立てて椅子から立ち上がり、わざと大きな靴音を鳴らして歩く。まるで子供みたいに。自分はこの苛立ちをぶつける場所はわかっていても、ぶつけることはできない。振り向くと、仲が良さそうにアレンと話しているリナリーが見えた。彼女は気にならないのだろうか、幽霊みたいだと。彼女なら、きっと自分の言って欲しいこともアレンの欲しい言葉も全部言ってやれるのだろうに。
「・・・ったく、イライラする」
もう一度アレンを見ると、やっぱり自分には鏡に映ることのできない幽霊のように見えた。
080216
改名&残留