(久々にあの子を見た。)
泣いていた。泣いているあの子が、一番あの子らしいだなんて。それはあながち間違っていないということはわかるが、悲しかったのだ。まるで、それではあの子はもう私には笑顔を見せてくれないようじゃないか。そして、たぶんそれすらもあながち間違ってはいない。下女となったあの子が、こちらに感情を顕わにすることなど。許すわけにはいかない、なんて自身はまるで思っていないが(泣くのなら泣いてくれればいいし、笑うのなら笑って欲しいのだ。そちらの方が、私も嬉しかった)あの子自身がその行動を恥ずべきだと思っている。それは、恐らく自分が許さないことより大きな事象だった。他人が禁止したあのではない、自ら禁じたのだ。意思は、固い。さすがは姫君の妹ですね、とひとりの巫女は言った。私は、悲しかった。また昔のように甘えて欲しかったし、名前も呼んであげたかった。でもそれは、私の甘えだ。あの子に対する愛情ではあっても、為になることはない。責める気などこちらが毛頭なくとも、あの子は自分を責めるのだろう。だから、あの子は泣いているのだ。自分を責めている。それは誰のせいでもない、私のせいだ。そうして私があの子が泣いているせいで私を責めていると知れば、あの子はさらに自分を責めるだろう。そうして、また私が。その繰り返し。だから、泣いているあの子に声を掛けることなど、できるはずはないのだ。
080216
残留